1. 着物が着崩れする原因
着崩れの原因は、大きく分けると3つあります。
一つ目は体の補正がきちんとできていないこと。
女性の体は緩やかな曲線を描いており、それが女性らしさを醸し出す素敵なところでもあるのですが、一枚の布を仕立てる着物は、体の曲線に合わせることが得意ではありません。そのため、美しい着姿を維持するためには、体の曲線を消し、寸胴に補正することが大切になります。
着物を着るための体型補正には、タオルや専用の補正パッドを使用します。体の凹凸に合わせて腰紐でタオルを巻きつけたり、補正パッドを入れた下着を着用したりして、体を寸胴に整えます。着物上級者になると、自分の体に合わせて工夫した補正具を持っている人も多くなるほど、実はこの作業が重要なのです。
補正は外からは見えませんが、上手に補正をすれば着崩れしにくいだけではなく、着姿も格段と美しくなるもの。タオルや補正パッドを当てる位置やボリュームを、何度か確認しながら調整すると良いでしょう。
二つ目は歩き方や所作の問題です。
着物は洋服に比べると、大きな動きに対応できません。そのため、動作が大きいと徐々に着崩れていってしまいます。襟が開いてきたり、裾が広がる人は動作や所作が大きいため、着崩れている可能性が大です。
歩く時は内股気味を基本に、歩幅はいつもより小さめにすると、裾の広がりが少なく、腕をあまり大きく動かさないことで、襟元の崩れも少なくなります。必要以上に動きを制限する必要はありませんが、大和撫子の気分で、いつもより少し控えめに動くくらいがちょうどいいと考えてください。
そして、最後は腰紐がきちんとしまっていないこと。
きつく締めると苦しいからと、腰紐を緩めに締める人は少なくありませんが、腰紐は着物の着付けの肝です。この部分が緩いと、着物のあちこちにたるみやシワが起きてしまいますので、腰紐はしっかりと締めましょう。
もしも腰紐をきつく締めることで「苦しい」と感じるようであれば、腰紐の位置が合ってない証拠です。自分にあった位置で締めれば、しっかり締めても苦しいことはありません。少し上や下、結び目の位置など、少しずらした位置を試しながら、自分にあった苦しくない位置を見つけましょう。
2. きつく締めすぎるのは着崩れ防止につながらない!
着崩れないように腰紐はしっかりと!と言っても、痛みがあるほどぎゅうぎゅうに締めれば良いというわけではありません。
痛みがあるほどに締めすぎると、せっかくの着物での時間が辛いものになってしまいマイナスとなってしまいます。着物は腰紐1本で留まっているため、しっかり締めるのは大切ですが、自分の体にとってちょうど良い位置やちょうど良い強さを見つけ出すことはもっと大切です。
体型や体の使い方の癖によって、締める加減や位置は変わってきます。何度か着ていくうちに、自分の着崩れの癖も見つかってきます。その癖に合わせて締め方や位置を工夫しましょう。
また、しっかり締める腰紐に対して、胸紐はしっかり締めすぎると息が苦しくなります。胸元の着崩れが気になるからと言って、締めすぎないように注意しましょう。胸元の乱れが気になる場合は、背中側に紐が通り、前部分は紐が通らないコーリンベルトを使用すると快適です。
3. 今すぐできる着崩れの直し方
着崩れているなと感じたら、その都度直すようにすると美しい着姿を維持することができます。
トイレのタイミングなどでは、鏡の前でチェックをして、気になる部分は直しましょう。
まずは襟元。着物の襟元が緩んでいると、途端にだらしない印象になってしまいます。そこで、襟元や胸元が緩んできたと感じたら、まずは鏡でバランスをチェックし、左の身八つ口に左手を入れて下前の襟元を調えます。下前が整ったら、おはしょりを弾きながら上前の衿を直します。
この部分は目で確認しながらできるので、きれいに仕上げることが簡単です。こまめにチェックして、崩れていたらさっと直しましょう。
茶席などで、立ったり座ったりすると、背中や腰に緩みができやすくなります。背中や腰にできた緩みは、背中側のおはしょりを下に軽く引っ張ることで整います。
たくさん歩いたり、おトイレの後などは、裾の乱れが気になる人が多いでしょう。裾が下がってきたと感じたら、まっすぐに立った状態で見頃のズレを直し、下がった部分を持ち上げます。その際、おはしょりをめくると仮紐がありますので、その仮紐を指で押さえてから行うときれいにできます。裾が揃ったら、おはしょりをきれいに整えて終了です。
どんな着崩れにせよ、大きく崩れる前に細かく治すことがポイントです。ただし、着物はどんなに着慣れている人でも多少は崩れてきてしまうもの。気にしすぎて楽しめないのも残念です。多少の着崩れは気にしないようにするのも、大切かもしれません。
4. 着崩れを防止するための工夫
着崩れをしないためには、自分の体を着物に合わせて補正すること、腰紐をしっかりと結ぶことが大事ですが、最大の工夫は所作にあります。
自分ではそんなつもりはなくても、洋服になれた現代の女性の所作はどうしても大きくなってしまいがちです。車の乗り降りや階段での所作、おトイレでの何気ない動作でも、いつもよりおしとやかに行うことが何よりも着崩れを防ぐ最大の工夫になります。
手の動かし方や、足の運び方、立つ際の姿勢など、着物には着物にふさわしい美しい所作があります。洋服と比べてどちらがいいとかではなく、それぞれの良い部分を意識して立ち振る舞うと良いでしょう。
5. 着崩れがどうしても直せない時は安全ピンがおすすめ
しっかりと着付けて、所作にも気を配っていたにもかかわらず着物が着崩れてしまった場合、いつも治せるとは限りません。
何度も直しているのにうまく直せず、着崩れがどんどんひどくなってしまう場合もありますね。そんな場合は最終手段。安全ピンを使いましょう。着物に穴が開くことになるので、最終手段ではありますが、即効性がある強力な方法です。
使い方は簡単。ずれてきた部分を多めにとって、安全ピンで留めるだけ。ただし使用後は、着物のメンテナンスを大切にしたいですね。
着物を着ることが特別になってしまった現代では、着崩れる着物をめんどくさいと感じる人も多いかもしれません。しかし、着物が持つ独特の美しさは、洋服にはない不自由さの中にあるものです。着崩れてしまったとしても、対処の仕方が分かっていれば大丈夫。だって昔の人は毎日、着物を着て毎日を暮らしていたのだから。
そう考えれば、着崩れは恐るるに足りません。敬遠することなく、着物を楽しみましょう!