ねずみに噛まれたらまず何をすべき?
咬傷(こうしょう)は傷口が小さく見えても皮膚の奥まで深く入り込み、細菌が深部まで到達すると感染症を起こす恐れがあります。そのため、ねずみに噛まれたときは、洗浄、保護、受診の順で対応してください。
確認したいポイントは以下のとおりです。
- すぐに流水と石鹸でしっかり洗う
- 傷口を消毒し、清潔なガーゼで保護する
- 傷が小さくても医療機関を受診する
順を追って解説します。
すぐに流水と石鹸でしっかり洗う
ねずみに噛まれたことに気づいたら、傷口を流水と石鹸で洗い流してください。ねずみに限らず、動物に咬まれたときは、傷口を流水で十分に洗う対応が基本です。
強くこすったり、口で血を吸い出したりする方法は避けてください。
傷口を消毒し、清潔なガーゼで保護する
洗い終わったら消毒し、清潔なガーゼで覆います。出血しているなら、ガーゼなどをあてて上から押さえて圧迫しましょう。
消毒は洗浄の代わりにはならず、汚れを洗い流したあとに行います。ガーゼで覆う前に、土やほこりが残っていないかも確かめます。
傷が小さくても医療機関を受診する
出血が少ない小さな傷でも、噛まれた後は医療機関を受診してください。医療機関では、以下のようなことができます。
- 傷の状態の確認と洗浄
- 異物除去
- 縫合が必要かどうか
- 抗菌薬が必要かどうか
- 破傷風の予防
破傷風のワクチンは、過去10年以上接種していない場合に接種を要するとされています。傷の汚染の程度によっては5年以内でも接種することがあるため、接種歴がわかる記録があれば持参してください。
参照元:くす通信(動物咬傷について):国立病院機構熊本医療センター
ねずみに噛まれたら病院は何科に行くべき?
何かを受診すべきか悩んだら、受診先は、傷の状態と体調から選びましょう。傷の処置が中心か、発熱などの全身症状が出ているかで、受診先が変わるためです。
確認したいポイントは以下のとおりです。
- 傷口の処置は外科や皮膚科に相談する
- 発熱や体調不良がある場合は内科も検討する
- 夜間や症状が強い場合は救急外来を検討する
自分の状況を踏まえたうえで、受診先の目安としてください。
傷口の処置は外科や皮膚科に相談する
噛まれた直後で傷の手当てが中心になるときは、外科や皮膚科が相談先になります。動物の咬傷では、傷の深さや汚染の程度に応じた処置が必要になるからです。
受診時には、噛まれた日時と部位を伝えてください。顔や手指の傷は機能や見た目に影響が残りやすいため、早めに受診しましょう。
発熱や体調不良がある場合は内科も検討する
数日たってから発熱や関節の痛み、発疹が出たケースでは、内科への相談も選択肢になります。傷が治りかけていても、感染症の症状はあとから現れるためです。
症状だけでは原因を絞り込みにくいため、受診では、ねずみに噛まれた経緯を伝えることで、診断の手がかりになります。
夜間や症状が強い場合は救急外来を検討する
出血が多い、傷が深い、息苦しさやじんましんが急に出た状態なら、救急外来の受診や救急要請を考えてください。動物に噛まれて出血が多い場合は、傷口を清潔なガーゼなどで押さえながら、速やかに医療機関を受診しましょう。
また、「すぐに病院へ行くべきか」「救急車を呼ぶべきか」判断に迷う場合は、実施地域であれば救急安心センター「#7119」に相談できます。医師や看護師などが症状を確認し、受診の必要性や救急車を呼ぶべきかについて案内しています。また、子どもや高齢者、持病がある方は、症状によって重症化する可能性もあるため、体調に変化がある場合は早めに医療機関を受診してください。
ねずみに噛まれるとどんな感染症のリスクがある?
ねずみに噛まれたからといって、ここで紹介するすべての感染症が咬傷からうつるわけではありません。ねずみが関わる感染症には、咬傷から直接うつるもの、フン尿や食品を介するもの、寄生虫を介するものがあります。
確認したいポイントは以下のとおりです。
- 鼠咬症は発熱や発疹があとから出ることがある
- アナフィラキシーショックは急な呼吸症状に注意する
- サルモネラ症はねずみが触れたものから感染する
- レプトスピラ症はフン尿から感染する
- ねずみに寄生しているノミやダニからも感染する
- ハンタウイルスの心配はほとんどない
それぞれの症状も踏まえて、順を追って解説します。
鼠咬症は発熱や発疹があとから出ることがある
鼠咬症(そこうしょう)は、噛まれた傷から細菌が入って起こる感染症です。直後に変化がなくても、数日後に発熱や発疹、関節の痛みが出ることがあります。
国内で原因菌として挙げられるのは、ドブネズミの3〜25%が保有するとされるスピリルム・ミヌスです。潜伏期間は4〜28日(通常は10日以上)と幅があり、いったん治りかけた傷が再び腫れて発熱するケースもあります。
参照元:「ラット咬傷歴が認められない鼠咬症例」:国立健康危機管理研究機構
参照元:「鼠咬症」:MSDマニュアル プロフェッショナル版
アナフィラキシーショックは急な呼吸症状に注意する
ねずみの唾液や体毛はアレルギーの原因になり、噛まれたあとアナフィラキシー反応を生じた症例も報告されています。
噛まれた直後にじんましんや息苦しさ、めまいが出たら、アナフィラキシーの可能性があるため、救急要請を検討してください。症状は短時間で進むことがあるため、自己判断で長く様子を見ないようにしましょう。
参照元:ラット咬傷によりアナフィラキシー反応を生じた1例:臨床皮膚科
サルモネラ症はねずみが触れたものから感染する
サルモネラ症は、ねずみが触れた食品や調理器具などを介して感染することがあります。また、病原体を保有するねずみなどの動物との接触によって感染する場合もあります。潜伏期間は1〜3日程度で、吐き気や腹痛、下痢、発熱が数日続きます。
キッチンで痕跡を見つけたら、ねずみが触れた可能性のある食品を処分し、器具を洗浄してください。
参照元:サルモネラ感染症:国立健康危機管理研究機構
レプトスピラ症はフン尿から感染する
レプトスピラ症は、保菌動物の尿で汚染された水や土壌が傷口や粘膜に触れて感染する病気です。潜伏期間は5〜14日程度で、発熱や筋肉痛から始まり、重症化すると黄疸や腎障害を起こします。
そのため、ねずみに噛まれた傷がふさがるまで、フンや巣の清掃は極力避けてください。清掃をする時は使い捨て手袋とマスクを着け、フンを乾いたまま掃き集めないのが基本です。
関連記事:家でねずみのふんを見つけたらどうすべき?処理やねずみ駆除の方法を解説
参照元:レプトスピラ症:国立健康危機管理研究機構
ねずみに寄生しているノミやダニからも感染する
ねずみの体には、ノミやダニが寄生しています。ねずみに寄生していたイエダニが移動し、人が刺されて強いかゆみが出ることも珍しくありません。
イエダニは体長0.5〜1.0mmで、ねずみの巣で大量に発生します。ノミやダニが媒介する病気の代表が、ペストとツツガムシ病です。
ペスト
ペストは、菌を保有するノミに刺されるなどして感染します。日本では1927年以降、発生例の報告はありませんが、海外では現在も患者が報告されています。
参照元:ペスト:国立健康危機管理研究機構
ツツガムシ病
ツツガムシ病は、草地や河川敷にいたり、野ねずみなどに寄生しているツツガムシの幼虫に刺されて感染します。潜伏期間は5〜14日で、高熱、刺し口、発疹が特徴です。感染は屋外が中心で、家の中で噛まれた傷からうつる病気ではありません。
参照元:つつが虫病:国立健康危機管理研究機構
参照元:ツツガムシ:保険医療局
参照元:「試験問題の作成に関する手引き」の改訂について(通知):神奈川県健康医療局生活衛生部薬務課長
ハンタウイルスの心配はほとんどない
日本国内では、1998年以降に腎症候性出血熱の患者発生は確認されていません。過去には実験用ラットを介した感染例がありましたが、現在は施設の管理体制が整えられています。
海外では2026年にクルーズ船での集団感染が報じられましたが、日本国内での感染リスクは低いと考えられます。
関連記事:ハンタウイルス集団感染はその後どうなった?感染者13人・死者3人、米CDCは対応終了
参照元:「腎症候性出血熱」:国立健康危機管理研究機構
家の中にねずみがいる場合はどう対策すべき?
噛まれた箇所への対応が済んだら、次は同じことが起きない状態をつくりましょう。
確認したいポイントは以下のとおりです。
- 粘着シートや忌避剤などで駆除する
- 侵入口は金網や防鼠パテなどで塞ぐ
- ねずみを寄せ付けない環境にする
- ねずみ駆除業者への相談も検討する
まずは、フンやかじり跡といった痕跡から、通り道と侵入箇所を把握してください。
関連記事:ラットサインとは?ネズミがいるか確かめる見分け方と対処法
粘着シートや忌避剤などで駆除する
ねずみを捕獲したいなら粘着シート、寄せ付けにくくしたいなら忌避剤やくん煙剤を使用しましょう。粘着シートはねずみの通り道に隙間なく敷き詰めると捕獲につながり、ねずみをその場所から遠ざけたり、寄せ付けにくくしたりする目的に向いた製品です。
また、殺鼠剤(さっそざい)には医薬部外品として承認されている製品もあります。表示された使用場所と設置量、設置期間を守って使ってください。その際、子どもやペットが触れない場所に設置することが重要です。
さらに、天井裏や床下での作業では、転落や粉じんの吸い込みに注意してください。ねずみの死骸には直接触れず、手袋とマスクを着けて作業を進めます。
侵入口は金網や防鼠パテなどで塞ぐ
捕獲や追い出しによってねずみがいなくなったことを確かめながら、侵入口を塞いでください。ねずみが残ったまま出入り口を一斉に塞ぐと、壁の中など手の届かない場所に閉じ込められ、そこで死んだ場合に死骸を回収できず、死骸の腐敗やダニの発生を招く恐れがあります。
塞ぐ場所は、以下のようなところです。
かじられにくい金網や防鼠(ぼうそ)パテで、隙間を残さないように塞ぎましょう。
関連記事:ネズミの侵入経路はこう塞ぐ!隙間の見つけ方と塞ぎ方を徹底解説
ねずみを寄せ付けない環境にする
餌と巣材をなくすほど、ねずみにとって住み着きにくい環境に近づきます。食品は密閉容器に移し、生ゴミはふた付きの容器へ入れてください。段ボールや新聞紙、布類は巣材になるため、処分するか床から離して保管します。
関連記事:ネズミが嫌いなニオイは何?効きやすい種類と正しい使い方を解説
ねずみ駆除業者への相談も検討する
自分で対応できる範囲と、専門事業者へ相談したほうがよい状態は以下のとおりです。
市販品での対応を続けても痕跡が減らない場合、専門事業者へ相談することをおすすめします。相談先は、以下のような条件を踏まえて比べましょう。
- 現地調査の有無
- 見積もりの作業範囲
- 追加料金の条件
- 保証の対象外となる条件
もし、賃貸住宅や集合住宅の共用部分でねずみが出た場合は、大家や管理会社への連絡が先です。専門業者以外だと、自治体や保健所では相談や捕獲器の貸し出しに応じる場合もあるため、利用したい場合は住んでいる地域の窓口で対応内容を確認してください。
ねずみに噛まれたら洗浄・受診・再発防止を順番に進めよう
ねずみに噛まれたら、以下の流れで対応するのが基本です。
- 流水と石鹸で洗う
- 消毒して保護する
- 傷が小さくても病院の受診を検討する
また、家の中にねずみが残っていると、再び噛まれるリスクが高まります。ねずみの痕跡がある場合は、ねずみ駆除の専門事業者へ相談してください。
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